掌編

秋への転移

こういった形で書くということをここでは避けて通りたかったのだ。だがそんな偉業を成せるほど私は何も知らず、今から書くことなどは幼い子供がロウソクに向かって吹いた息のように、火を消すには余りにも頼りなく、燃える盛る赤色の手前で力尽きてしまうこ…

無題1

リビングのソファに横たわった女の手の爪の先が、黒く汚れていた。私はそれを拭き取ろうと思ったが、女はちょうど、私が手を手に伸ばした瞬間に目を覚ました。女はものすごい剣幕で私を睨んだ。すると女の左目が飛び出した。目玉を繋いでいる筋肉が伸び、そ…

自動手記

列車は最初から脱線していて、あたかもそこに砂漠が存在していて、そこには一匹の羊が三本の足で歩いているように、僕はこの巨大な本のページの見開きの上に腰を下ろしていた。ある晩にはカルカッタの渡船場にゴーレムを見た。彼は非常に敬虔で川の流れを妨…

隠された風景

何故、浮浪者が橋の下を好むのかといえば、人目の付きづらい場所であるから、というのでは回答にはならないだろう。まぁ、回答にならないといえば言い過ぎだが、十分ではないだろう。僕はこれに対する一つの提案をしてみたいと思う。 橋を渡る者の目的は、或…