無2

今日は待ちに待った土曜日。お爺さんが茶色い葉の混じった黒い液体に顔を突っ込んでいた。新宿駅の東口へと階段を上り、左に沿って歩くと喫煙所。2年ほど前に私は煙草をやめていたが、友人のyが「喫煙所へ行こう」というのでついていった。yはさっきキオスクで買った100円ライターをポケットから取り出して火を着けた。今日は風が強く、何度もホイールを回すが駄目なようだった。煙草に空いた手を添えてほんの少しだけ向きを変える。また向きを変えて親指を擦る。また向きを変えて親指を擦る。しまいには一周していた。少し風がやんだところでようやく煙が流れた。二人組の清掃員のお爺さんが灰皿の交換をしにやってきた。清掃員のお爺さんが灰皿のステンレスの扉をめんどくさそう「バン!」と開けたその勢いで、吸い殻の溜まったニコチンとタールの黒い液体の入った缶に顔を突っ込んだ。ゴボゴボと音を立てていました。しばらくして顔をあげて「ねぇ、助けてくれ、ねぇ、助けてくれ」といってまた顔を突っ込んだ。3分ほど繰り返された。みんな行儀よく煙草を喫んでいた。もう一人のお爺さんはしかめっ面をして片足を前に出したり引いたりしていた。音が鳴りやんだ。カップラーメンができるようにお爺さんの死が沸いた。私とyはもう爺さんの顔を見ることはなかった。もう一人の清掃員のお爺さんがガラケーを取り出して慣れない手つきで救急車を呼んだ。少なくとも私とyはただ驚くわけでも助けるわけでもなくただの観客だった。yは投げ銭でも入れるかのようにお爺さんの顔の混ざった液体に灰を入れた。私は久々にいい映画を観た気分になっていた。救急車が来る前に私とyはその場を離れた。その足で16時20分、私とyは最新型の3Dの映画を観たが何も面白くなかった。